ぼくは、あなたのくだらないこと

かなしい思い出はうすれてゆく。たぶん脳みそが気をきかせて、忘れたふりをしてくれている。

ただ、どうもそのせいで、昨年の思い出を丸ごと忘れそうになる。セーフサーチ機能をONにしたらなにも表示されなくなった、みたいな状態。

このままいくと、なにもかもに “かすみ” がかかって、見えなくなる。

ああ、いけない。きちんとしっかり、しあわせを、この愉快な日々を、見つめておかなければ。

たとえ戦争がつづいても、つらいニュースばかりが聞こえても、また“誰か”がぼくの前からいなくなっても。

ぼくらはしあわせを、手ばなしてはならない。


《戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである。》


文学者の吉田健一さんのこのことばを胸に。

きっとぼくらは、大切なことだけでこころを満たしてはいけない。

もっと、どうでもいいことを。

ひとつでも多く、くだらないことを。

そんなことだけをしっかり覚えていられるよう、つとめなくては。

今のこの世界に慣れないで。もっとよい世界をのぞんで。

今年もあなたの、くだらないことでいられますように。